焼酎百景 酒草子(しょうちゅうひゃっけい ささぞうし)

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2004年10月11日

京屋酒造の醸造場に潜入!おいしさの秘密を探った!!

皆さん、焼酎ってどうやってつくられているかご存知ですか?なんとなーく、蒸留して作るんだよねーって言うところまでは知っていても、蒸留に至るまでにはどんな過程があるのか、あまり良く知らない人もいらっしゃるのではないでしょうか。

日本酒やワインとどう違うんだろう?どうして本格焼酎は素材の味がするんだろう?そんな焼酎のウンチクを知っていれば、知らないでただ「おいしいー」と飲んでいたときよりももっと焼酎を楽しめるようになるかもしれない!ということで、芋焼酎「かんろ」で有名な宮崎県日南市の京屋酒造への突撃取材を敢行!製造工程を取材+ソボクな疑問をぶつけてきました!

ちなみに宮崎県日南市は現在放送中のNHK連続テレビ小説わかばの舞台にもなっている場所。主人公わかばの母親の実家の老舗焼酎メーカーという設定で、京屋酒造の社長、渡邊さんのお宅や醸造所も撮影で使われています。

では、早速、焼酎のできるまでの探検、スタート!
(※印がある緑色の箇所は、いちばん下に「焼酎豆知識」として詳細説明があります)


1.まずタンクで麹を培養します。

この麹、焼酎のアルコール分を作るのに欠かせないものです。麹はお米にくっついてお米のデンプンを分解することで、甘ーい糖を作ります。

その甘い糖分をえさとして酵母が集まり、糖分をアルコールに変えてくれます。この一連の麹菌と酵母の作業を、平行複発酵※1といいます。このタンクでは、そういったすごい働きをする麹菌を増やす作業を行います。

このドラムにお米を入れると、お米を洗う→水を吸収させる→蒸気、熱を加えて蒸す→麹を加え培養する、という一連の作業をしてくれます。水分と適度な熱、そしてお米という栄養分を得て、麹菌はこの中で急激に増殖します。


2.次に出来上がった麹を放冷器で冷やし、一昼夜おいて麹菌を定着させます。

左の写真は放冷器。蒸し上がったホコホコのお米を固まりのままおいておくと、表面は乾燥して温度が下がり、逆に中は熱くて水分たっぷりな環境になってしまうので、均一に広げることで、お米の水分蒸発を促進しつつ、麹菌の増殖を一定にさせます。

「黄麹で仕込む日本酒のモロミは低温に保つことで雑菌を防ぐけれど、焼酎で使う白麹、黒麹はクエン酸を多量に生成しモロミのpHを低く保って雑菌を防ぐんだよ。だから比較的高温の蔵内でも順調に発酵を続けるんだ」と渡邊社長。ナルホド!だから温暖な九州地方では焼酎造りが盛ん※2なんですねー


3.今度は800リットルの甕(かめ)に水と麹を入れ5~6日発酵させた後、蒸した芋を入れて12日間発酵させます。

最初の発酵でできたものが「一次もろみ(醪)」、次の発酵でできたものが「二次もろみ」といいます。一次もろみと米をいれて仕込めば米焼酎、麦なら麦焼酎、芋なら芋焼酎になります。

京屋酒造のこだわりが、この甕仕込みです。ステンレスタンクで外部から温度調整をして管理する酒蔵が多い中、800リットルという少量の仕込み方法で、外部より強制的に熱を加えたり奪ったりしない自然な醗酵を守っています。

確かに大きなタンクで温度管理したら楽かもしれないけど、それでは優秀だけど画一的な、同じ顔をした焼酎ができてしまう可能性があります。甕仕込みは天候の変化を敏感に察知し、毎日様子を見ながら一つ一つの甕の状態をみつつ調節するという、まるで我が子を見守るような丁寧な丁寧な仕事です。

私は趣味で天然酵母を使ったパンをよく焼くのですが、純粋培養の優等生であるイーストとは違い、天然酵母は天候や湿度、こね具合によってもできあがりが微妙に違ってきます。もろみとの対話と、パン酵母との対話。手がかかるほどかわいい、そして美味しいというところに共通項を見いだし、なんだか嬉しい気分です。


4.最後に、発酵の済んだもろみを蒸留します。

日本酒と焼酎の大きな違いは、もろみを漉すか蒸留するかです。日本酒の場合はできあがったもろみを濾過しますが、焼酎はぐつぐつと火にかけ、出てきた水蒸気を取り出します。蒸留水の作り方、皆さんも小学校の時に理科の実験で習いましたよね?それと原理は一緒です。

但し、甲類焼酎は「連続式蒸留機」という、読んで字のごとく蒸留を連続して行える機械で、より純度の高いアルコールを造るのに対して、京屋酒造が手がける本格焼酎(乙類)焼酎は「単式蒸留機」というものを使い、蒸留は一回です。その分素材由来の味がする焼酎ができます。(もっと詳しく知りたい方は下の※3をご参照ください)

また、ここで圧力を低くして、普段沸騰する温度よりも低い温度で沸騰させて蒸留する(減圧蒸留)か、ふつうの圧力の下で沸騰させて蒸留する(常圧蒸留)かによっても、風味が変わってきます。

この蒸留機1つで、減圧蒸留常圧蒸留(※4)もできるようになっているそうです。いわば圧力鍋とふつうの鍋、両方の機能をもったものといった感じでしょうか。高機能ですね。右の写真は沸騰中のもろみ。グツグツと対流しています!


これはボイラー。最近のボイラーは、熱はでるけど蒸気があまりでないものが多いそうなのですが、京屋酒造ではあえて、昔ながらの水蒸気がたくさんでるボイラーを使っているとのこと。

「原料の芋、米は水分をたっぷり含んだ低圧の蒸気で蒸したほうが味に幅がある美味しい焼酎が出来るので、あえて熱効率が悪くてもコルニッシュという古いボイラーを使い続けているんだよ」と渡邊社長。

なるほど!例えば電子レンジで温めた芋は甘味が足りなくてモソモソしているのに、同じ芋でも蒸し器で蒸したものは驚くほど甘いですよね。同じ「温める」でも、温め方によって相当な違いが生まれます。それにパンだって、発酵後焼く前には霧吹きで水分をたっぷり与えます。そうすることによって表面が乾くことがなく、ふっくらと仕上がります。「温める」という過程一つとっても安易な妥協を許さず、なぜそうするかという哲学を守り抜く酒蔵なんだなー、とただただ感心することしきりでした。


今回の蔵訪問で印象的だったのは芋焼酎の奥の深さです。原料をただ蒸留するだけではなく、蒸留に至るまでにはそれこそ数え切れないほどの工夫があるのです。例えば同じ品種の芋でも原料の芋の皮を全部むくか、半分むくか、全くむかないかでも味の印象はまるで変わるし、白麹を使うか、黒麹を使うかや、割水をどのくらい入れるかでも「これが同じ品種?」と疑うほど違うものができます。

また芋は、ある程度貯蔵がきく米や麦と違い、畑から採れたてで新鮮なうちの9~12月に製造が限定されてしまいます。ブームだからといって急に増産するといってすぐできるものではないし、さらに限定された品種でつくるため、何しろ手間がかかる、デリケートなものだということも知りました。

そんなデリケートな芋焼酎を丁寧に丁寧に製造していく京屋さんの姿勢に感動!

さらに京屋酒造では、地域特産の「平兵衛酢(へべす)」という、すだちに似た果実を本格麦焼酎に漬け込んだリキュールや、ナツメヤシを原料にした焼酎なども出しているのです。甕仕込みという昔ながらの製法を守りながらも、常に新しい挑戦をしつづけるこの酒蔵。これからも革新と伝統を共存させて、おいしい焼酎を造っていってほしいですね。



焼酎基礎知識

※1●焼酎、日本酒、ビール、ワイン。発酵のしかたに違いはあるの?

どれもアルコール発酵(酵母が糖分をアルコールと炭酸ガスに変える現象)をしているというところは共通です。でもアルコールをつくる酵母は甘いものが大好きで、甘くないものにくっつくことはできません。そこで、もともと甘くない原料は甘くする必要があります。

ワインに使われるブドウにはもともと糖分が含まれているため、酵母はくっついて、勝手にアルコールをつくることができます(これを単発酵といいます)が、日本酒やビール、焼酎に使われる米や麦にはもともと糖分が含まれていません。そこで焼酎、日本酒、ビールは

1.原料に含まれているデンプンを酵素(日本酒・焼酎は麹、ビールは麦芽)によって糖化させ
2.その糖に酵母がくっつき、アルコール発酵する

という2段階を踏みます。

焼酎、日本酒は、この糖化→アルコール発酵という一連の現象が1つの場所で同時に行われます。これを平行複発酵といいます。文字通り、複数の発酵が平行して行われているということです。

一方ビールの場合は糖化とアルコール発酵は同時には行われず、糖化終了後、アルコール発酵が行われます(これを単行複発酵)といいます。


※2●九州ではなぜ焼酎が多く作られるの?

焼酎に一般に使われる麹は、白麹や黒麹です。日本酒に使われる黄麹と違い、白麹や黒麹はクエン酸を多く出します。クエン酸が雑菌をやっつけてくれるおかげで、暑い気候でももろみが変質するのが防けます。だから温暖な九州では焼酎づくりが盛んなのです。

夏場のお弁当にはクエン酸を多く含む梅干しを入れると痛みにくいと言いますが、それと同じ作用を麹ももっているなんて、すごいですね。


※3●甲類・乙類って何?

「ホワイトリカー」として知られる甲類焼酎と、本格焼酎として人気の乙類焼酎。どちらも、もろみを煮立たせて蒸気を取り出すという原理は一緒なのですが、蒸留の仕方に違いがあります。

甲類は連続式蒸留機、乙類は単式蒸留機というものを使っています。単式蒸留機とは、もろみをぐつぐつと火にかけ、でてきた蒸気を取り出して冷やす機械です。一度しか蒸留しないため、芋や麦の素材の味が生きた焼酎ができます。

一方連続式蒸留機は、蒸留を1回ではなく連続して行い、繰り返すことでどんどんアルコールの純度を高めることができる機械で、この機械で蒸留すると不純物が少なく、クセがない味わいに仕上がります。

また酒税法により、甲類はアルコール度数が36未満、乙類は45度以下と決められています。


※4●常圧蒸留と減圧蒸留って何?

気圧の低い富士山の頂上でお米を炊こうとすると、なかなかうまく炊けません。なぜなら沸点が低いために、お米に火が通らないからです。

このような圧力により沸点が変化することを利用して、蒸留機の中の圧力を人工的に下げることで沸点を低くし、低温で蒸留させる方法を減圧蒸留、通常の圧力で蒸留を行う方法を常圧蒸留といいます。

常圧蒸留は高温で蒸留するため、エキス分がぎゅっとでた、原料の特製を生かした薫り高い焼酎ができるといわれていますが、その一方、その香り高さは素材の持ち味を消してしまうほど強烈な場合もあるので、熱狂的なファンもいる反面、敬遠する人もいるようです。

それに対して減圧蒸留で作る焼酎は、低温でじわじわと成分を抽出するためおだやかに原材料の香りがでるので、最近の軽快でソフトな感じの焼酎の人気に伴い主流になりつつあるようです。

投稿者 Admin : 2004年10月11日 22:57