焼酎百景 酒草子(しょうちゅうひゃっけい ささぞうし)

突撃潜入

六本木Bar Abbyにてへベスリキュールのカクテル二種を味わった

ご存じだろうか、「へベス」という名前を、、、?
関東、いや関西でも知らない人が多いであろうこのへベスとは「平兵衛酢」と書く宮崎特産の柑橘(かんきつ)品種だ。京屋酒造では、このへベスを麦焼酎に漬け込みリキュールにした「Hebess Ronde(ヘベスロンド)」を出している。この辺のことは利き酒師ちえさんの前回の記事にも書いたとおりだ。

僕が2年ほど前に京屋酒造を訪れた時、蔵人のひとりが僕に、濃い緑色の拳より少し小さいくらいの柑橘をみせてくれた。

「これ、なんだかわかります?」

「わからないよぉ」

「平兵衛酢っていうんですよ!独特の香りと酸味がある、日向の特産品なんです。いま、これを使った酒を研究中なんです!」

と得意げに教えてくれた。その結晶が実を結んだのが、このヘベスロンドなのだ。薄緑色の綺麗な、上品な甘口リキュール、、、この新商品、すでに人気が高いらしいのだが、実はこれをカクテルにして飲ませてくれる店がある。それが今回紹介させて頂く六本木「Bar Abby」だ。

実を言うと、この「Bar Abby」は、京屋Webの関係者の間では、やたらと稼働率の高いバーである。それはなぜかというと、ずっと前から京屋の焼酎、特に「甕雫」を置いており好評を博しているからだ。

「僕が宮崎出身だからというのもありますけどね。芋焼酎の旨さをもっと沢山知って頂きたいと思って、店には出しているんですが、お客さんの評判は無茶苦茶いいんですよ!」

というのは、このAbbyの店長である今村頼輝(いまむらよしてる)さんである。

現在も青山にある素晴らしいバー「Top Note」に在籍している時に京屋の焼酎を持ち込まれ、その味に驚嘆してから、日向生まれの血が騒ぎ出したのだろうか、京屋の焼酎を色んなイベントで使ってきたそうだ。

「以前、京屋さんから48本もの甕雫を仕入れて、それを大きな特注の瓶に入れて、系列店と一緒にお客さんに飲み放題していただくという企画をしました。大盛況で、ほとんど空いてしまったと思います。甕雫は飲み口がいいので、都会の方には合うのだと思いますね。」

そんな今村さんに、ヘベスロンドを使ったカクテルを作って頂いた!今回はそのレシピを一挙公開だ!

「レシピって言っても、すごく簡単なものですよ!ベースのリキュールが旨いので、手を加えすぎない方が旨いんです。」

といいながら教えてくれたのが、下記の二種だ。

1.へベス・クバーノ
 これ、実は名カクテルである「ソル・クバーノ」のアレンジだ。ソル・クバーノは、日本のバーテンダーが創作し、世界でも愛されているカクテル。ラムがベースになったそれを、ヘベスロンドをベースにしているのが今回飲ませて頂いたへベス・クバーノだ。

■へベス・クバーノのつくり方

(1)ロックアイスを作る。コップにちょうど収まりがいいように、3~4個入れておく。

(2)ヘベスロンドをコップに半分注ぐ。


(3)生グレープフルーツを手で絞った果汁を用意。これをグラス3分の1程度注ぐ。


(4)トニックウォーターを、グラスの縁まで注ごう。


あとは、これをステアしてできあがりだ。

どうだろう、非常に簡単だが、これでへベス・クバーノのできあがりだ。

薄緑色の美しい見た目と、グレープフルーツの爽やかで少しほろ苦さのある香りが、へベスの香りと相まって素晴らしい!ヘベスロンドはかなり甘めの酒なのだが、グレープフルーツを足すことによって、甘みが緩和され、大人の味に昇華されるのだ。

「ヘベスロンドはとても上品な味だと思います。バーテンダーとしては面白いですね。皮の苦みとか、ヘベスの香りを少しずつ残していて、いい状態を保っている。リキュールとしてはそのまま飲むにもいいと思います。ロックで飲むとよりいいですね。おそらく、ベースの焼酎にいいものを使っていると思いますよ!
山本さん、もう一品面白いのを作ったんですよ。飲んでみてください!」

と言って、やにわにキュウリを取り出しスライスし始める今村氏。薄切りにしたキュウリを今度は、やや大きめのみじん切りにし始めた。

「これは、、、へベス・キューカンバーとでも名付けましょうかね。」

2.へベス・キューカンバー

■へベス・キューカンバーのつくり方

(1)みじん切りにしたきゅうりをグラスに入れる。



(2)キュウリをステア用のスプーンで潰れない程度に押しつけ、果汁と香りを出す。

(3)ヘベスロンドを適量注ぐ。キュウリの香りが感じられる程度の量に。そしてステア。


(4)細かめのクラッシュアイスを満たし、キュウリの薄切りを添える。


出だしから意表をついたこのカクテルを一口含む。

ヘベスロンドをそのまま飲んだ時には甘い香りと糖分が感じられるだが、キュウリが入ることによって爽やかで強い清涼感が眼前に現れた!これはびっくり、素晴らしい相性だ。キュウリは瓜だからその独特の香りが強いものだけど、柑橘を合わせると青臭さがなくなり、ヘベスロンド自体をもっと上品なものに押し上げてくれる。

「これはビックリですよ、すごくすっきり、上品になりますね!」

「そうでしょ?実はこれ、常連のお客さんと一緒に考えたんです。ただのリキュールとして飲むだけじゃ面白くないなぁ、、、そうだ、キュウリと合うんじゃないの?って。ドンピシャでしたね。」

いや、ほんとうにビックリである。Abbyを訪れることがあればぜひ頼んで頂きたい。意外性が高いが、実は正統派の味になるのだ。脂モノを食べた後などには、口元が涼やかになること請け合いだ。

ヘベスロンドは、実はアルコール度数30度の強いお酒だ。なにも腹に入れずに飲み出したので、すぐにほろ酔い気分になってしまった。酔ったついでに今村さんのこれまでのヒストリーを聴いてしまう。

「僕は宮崎県の佐土原町というところで生まれました。学生の頃に飲食関係のバイトをしていて、まあ簡単にいえばバーテンダーってモテルんじゃないかと思って(笑)。卒業後、知り合いのバーテンダーさんに相談したら、料理を覚えろって言われたんです。それで神戸の元町のレストランで働き始めたんですね。そうしたら、震災が来たんです。もう街全体がガタガタで、バーテンダーどころじゃありませんでした。その頃、東京のバーテンダースクールを紹介されたんです。一念発起して東京に出てきて、青山「Top Note」に出会ったんです。オーナーの武蔵さんにお願いしたら「おいでよ」と言って頂いて、、、それから僕のバーテンダー人生が始まりました。」

今村さんが青山TopNoteにいる時代に、僕も数回寄らせて頂いた。その頃から元気のいい日向の熱っぽいエネルギーが、客席にも伝わってきたものだ。

「この店は、2003年5月から開店です。店舗自体は昔からあるのですが、オーナーさんからTopNoteのオーナーである武蔵に『店を引き受けて欲しい』というオファーがありまして、、、それで僕がアサインされたんです。この店は、インテリアデザイナーとして著名な内田繁さんがデザインした店なんです。こんなにスゴイ店を任せて頂けるのは名誉なことなので、頑張っているところです!」

すでに六本木では人気店となっているAbbyは、生のジャズピアノの演奏が聴けることでも有名だ。六本木とは言っても、喧噪から少しはずれたところにある玄人好みの店であることも幸いしている。客席は落ち着いており、酒を楽しむ客が立ち寄る店として確固とした位置を保っているのだ。

「京屋さんの焼酎は、本当のことを言うと、『かんろ』などの伝統的な焼酎が好きなんですよ。地元の人間から観ると、芋臭いのが好きなんですね。でも、地元以外の方、特に関東の方には、甕雫がとても飲みやすいと思います。クセが無くて、上品で、、、水を少し垂らすと香りも立ってきます。ウチに寄ったら、ぜひ一度お試し頂きたいですね。もちろんへベスカクテルもいつでもお出ししますよ!」

この取材をお願いしたのは月曜日の午後6時という、普通なら誰も酒を飲みに来ないような時間だったにもかかわらず、僕らが話をしているうちにお客さんが入ってきた。夜のスターターに一杯という感じだろうか。目配せをしながら今村さんがビールを注ぎにいく。

クールで確かな技量と熱い日向魂。この二つが合わさり、絶妙な京屋焼酎のカクテルが生まれる様を、とくと見せて頂いた。喧噪と幻惑の街・六本木に、静かに京屋の旨い焼酎の息吹が伝わっている。京屋ファンの方には、ぜひ一度訪れていただきたいものだ。

■Bar Abby
東京都港区六本木7丁目8-2 アルカサール八木8F
03-3408-1367
18:00~02:00
日・祝日 休み

投稿者 Admin : 2004年11月16日 20:13

突撃潜入

多摩川のほとりにある癒し系バーで、焼酎の飲み比べ

kanban.jpgつい数ヶ月前の暑さが嘘のように、肌寒い日々が続いていますね。こんな時期には暖かい部屋で飲む温かい焼酎が格別です。

さて、そんな寒空の下でも南国の雰囲気を味わえるバーが、今回の突撃取材先、「CAFE SUNSET BEACH」です。やまけん氏による「Bar オーパ 門前仲町店」への突撃に続く第3弾は、私の地元のカフェバー、「CAFE SUNSET BEACH」をご紹介します。

手前味噌ですが私の地元、川崎市登戸はオーガニックレストラン&カフェや、おしゃれなカフェバーなどが最近増えてきている注目の街です。また、近くに明治大学、専修大学があるせいか、学生向けの安くておいしい食事どころもたくさんあります。電車だと新宿から急行で約20分と、都心からのアクセスもなかなか良いです。近くには多摩川があり、のどかな風景が楽しめます。

■CAFE SUNSET BEACH
〒214-0014
神奈川県川崎市多摩区登戸1728
tel:044-933-8505
営業時間:午前11時半~深夜2時
定休日:日曜、祝祭日

都心から車で世田谷町田線を町田に向かい直進した先にあるこのお店は、都心の喧騒を離れた多摩川のほとりにあります。「海の家」のようなゆったりした空気が店内には流れていて、外は冬に向かっているということを忘れてしまいそうです。

kabocha.jpgハロウィンが近い中お邪魔したので、カウンターにはかぼちゃのディスプレイが賑やか。そして店内にはイチロー似のマスターが!(かなり似ています。ぜひ顔写真を!とお願いしたのですが…。「いやいや…」とお断りされてしまいました。マスターに会いたい方はぜひお店で!)

このお店ではカクテルはもちろんのこと、本格焼酎や日本酒、そしてハワイのコナビール、メキシコのコロナビールなど、様々な飲み物が楽しめます。

さて、今回も前回と同様、マスターに試飲いただいたのは以下の焼酎です。お家でくつろぎながら、ロックで試飲いただいたとのこと。

shouchu.gif

■飲んだ印象はいかがでしたか?

甕雫はクセがなくて飲みやすい焼酎ですね。スーパーライトかんろはやや辛口な印象をうけました。かね京かんろはフルーティで女性に好まれそうです。うちのメニューでいうと、アボカドとトマトのサラダなんかが合いそうですね」

tomato.jpgアボカドとトマトのサラダはこちらです。アボカドとトマトを切って、塩とレモンで食べるシンプルなもの。アボカドのねっとりしたコクをレモンがスキッと洗い流してくれる、爽やかな一品です。そして塩とレモンによってトマトの甘さが引き立って美味しい!このようにシンプルな味付けのものには、確かに低温で蒸留されたフルーティな焼酎がよさそうです。お互いが味の邪魔をせず、調和しそうですね。

■では、残りの焼酎はいかがですか?

かんろは辛口、すっきり系で、刺身などに合いそうですね。特選かんろも辛口ですが、かんろと違って芋の香りが強くでている気がします。男性的な酒だと思います。時代蔵かんろは甘口で深みがあります。一番気に入りました。うちのメニューにはないのですが、グラタン、チーズ系など、とろみとコクがある料理に合いそうですね。」

なるほど!焼酎にグラタンとは意外でした。でもお話を聞いていると、確かに料理に負けない強さを持ったお酒なので合いそうです。試してみたいですね。

マスターのお話を聞いていると、前半のABC(低温蒸留のもの)は女性的なやさしい感じで、前菜などの軽い食べ物に合いそう。後半のDEF(高温蒸留)は男性的で力強い感じで、しっかりした食事系の食べ物に合いそう、というカテゴリー分けができそうです。

■焼酎をカクテルのベースにすることはありますか?

純度が高いホワイトリカーならありますが、素材の味が強くでている本格焼酎は、他のものと割るよりもそのまま楽しむほうがいいと思いますね。でもあえて使うのであれば、比較的クセが少ない麦焼酎がいいかと思います。

今カクテルのベースとして主流になっているのは、ニオイが少なくてクセのないウォッカです。他に混ぜるものの邪魔をしないからです。本格焼酎の中で比較的ウォッカに似ているのが麦焼酎ですかね。

ふむふむ。確かに本格焼酎を他のもので割ってしまうのは、せっかくの素材の味を殺してしまうことになりかねないので、もったいない気がしますよね。

今回、マスターはこれらの焼酎を家で鱈の甘露煮と一緒に召し上がったそうですが、どの焼酎にもぴったりだったそうです。食中酒の王、焼酎。恐るべしです。

どんな料理にも合ってしまうがゆえに、特にぴったりの料理をピックアップするのは結構大変だったのではないかな?と思います。お忙しい中、難しいピックアップにご協力頂き感謝です!

何にでも合ってしまう焼酎に、あえてさらに上を行くぴったりの相性を探求する。そんな難しいけど面白い実験を、これを機にあなたもしてみませんか?

------

(お知らせ)
私ごとで恐縮ですが、このたび社団法人 日本ソムリエ協会認定ワインエキスパートの試験に合格しました!ワインの勉強で得た、料理とお酒との相性に関する知識や、お酒の歴史の知識などを生かしつつ、皆さんのお役に立てるような記事がかけるよう、ますます精進しますので、今後もよろしくお願いします。

投稿者 Admin : 2004年10月30日 02:52

突撃潜入

京屋酒造の醸造場に潜入!おいしさの秘密を探った!!

皆さん、焼酎ってどうやってつくられているかご存知ですか?なんとなーく、蒸留して作るんだよねーって言うところまでは知っていても、蒸留に至るまでにはどんな過程があるのか、あまり良く知らない人もいらっしゃるのではないでしょうか。

日本酒やワインとどう違うんだろう?どうして本格焼酎は素材の味がするんだろう?そんな焼酎のウンチクを知っていれば、知らないでただ「おいしいー」と飲んでいたときよりももっと焼酎を楽しめるようになるかもしれない!ということで、芋焼酎「かんろ」で有名な宮崎県日南市の京屋酒造への突撃取材を敢行!製造工程を取材+ソボクな疑問をぶつけてきました!

ちなみに宮崎県日南市は現在放送中のNHK連続テレビ小説わかばの舞台にもなっている場所。主人公わかばの母親の実家の老舗焼酎メーカーという設定で、京屋酒造の社長、渡邊さんのお宅や醸造所も撮影で使われています。

では、早速、焼酎のできるまでの探検、スタート!
(※印がある緑色の箇所は、いちばん下に「焼酎豆知識」として詳細説明があります)


1.まずタンクで麹を培養します。

この麹、焼酎のアルコール分を作るのに欠かせないものです。麹はお米にくっついてお米のデンプンを分解することで、甘ーい糖を作ります。

その甘い糖分をえさとして酵母が集まり、糖分をアルコールに変えてくれます。この一連の麹菌と酵母の作業を、平行複発酵※1といいます。このタンクでは、そういったすごい働きをする麹菌を増やす作業を行います。

このドラムにお米を入れると、お米を洗う→水を吸収させる→蒸気、熱を加えて蒸す→麹を加え培養する、という一連の作業をしてくれます。水分と適度な熱、そしてお米という栄養分を得て、麹菌はこの中で急激に増殖します。


2.次に出来上がった麹を放冷器で冷やし、一昼夜おいて麹菌を定着させます。

左の写真は放冷器。蒸し上がったホコホコのお米を固まりのままおいておくと、表面は乾燥して温度が下がり、逆に中は熱くて水分たっぷりな環境になってしまうので、均一に広げることで、お米の水分蒸発を促進しつつ、麹菌の増殖を一定にさせます。

「黄麹で仕込む日本酒のモロミは低温に保つことで雑菌を防ぐけれど、焼酎で使う白麹、黒麹はクエン酸を多量に生成しモロミのpHを低く保って雑菌を防ぐんだよ。だから比較的高温の蔵内でも順調に発酵を続けるんだ」と渡邊社長。ナルホド!だから温暖な九州地方では焼酎造りが盛ん※2なんですねー


3.今度は800リットルの甕(かめ)に水と麹を入れ5~6日発酵させた後、蒸した芋を入れて12日間発酵させます。

最初の発酵でできたものが「一次もろみ(醪)」、次の発酵でできたものが「二次もろみ」といいます。一次もろみと米をいれて仕込めば米焼酎、麦なら麦焼酎、芋なら芋焼酎になります。

京屋酒造のこだわりが、この甕仕込みです。ステンレスタンクで外部から温度調整をして管理する酒蔵が多い中、800リットルという少量の仕込み方法で、外部より強制的に熱を加えたり奪ったりしない自然な醗酵を守っています。

確かに大きなタンクで温度管理したら楽かもしれないけど、それでは優秀だけど画一的な、同じ顔をした焼酎ができてしまう可能性があります。甕仕込みは天候の変化を敏感に察知し、毎日様子を見ながら一つ一つの甕の状態をみつつ調節するという、まるで我が子を見守るような丁寧な丁寧な仕事です。

私は趣味で天然酵母を使ったパンをよく焼くのですが、純粋培養の優等生であるイーストとは違い、天然酵母は天候や湿度、こね具合によってもできあがりが微妙に違ってきます。もろみとの対話と、パン酵母との対話。手がかかるほどかわいい、そして美味しいというところに共通項を見いだし、なんだか嬉しい気分です。


4.最後に、発酵の済んだもろみを蒸留します。

日本酒と焼酎の大きな違いは、もろみを漉すか蒸留するかです。日本酒の場合はできあがったもろみを濾過しますが、焼酎はぐつぐつと火にかけ、出てきた水蒸気を取り出します。蒸留水の作り方、皆さんも小学校の時に理科の実験で習いましたよね?それと原理は一緒です。

但し、甲類焼酎は「連続式蒸留機」という、読んで字のごとく蒸留を連続して行える機械で、より純度の高いアルコールを造るのに対して、京屋酒造が手がける本格焼酎(乙類)焼酎は「単式蒸留機」というものを使い、蒸留は一回です。その分素材由来の味がする焼酎ができます。(もっと詳しく知りたい方は下の※3をご参照ください)

また、ここで圧力を低くして、普段沸騰する温度よりも低い温度で沸騰させて蒸留する(減圧蒸留)か、ふつうの圧力の下で沸騰させて蒸留する(常圧蒸留)かによっても、風味が変わってきます。

この蒸留機1つで、減圧蒸留常圧蒸留(※4)もできるようになっているそうです。いわば圧力鍋とふつうの鍋、両方の機能をもったものといった感じでしょうか。高機能ですね。右の写真は沸騰中のもろみ。グツグツと対流しています!


これはボイラー。最近のボイラーは、熱はでるけど蒸気があまりでないものが多いそうなのですが、京屋酒造ではあえて、昔ながらの水蒸気がたくさんでるボイラーを使っているとのこと。

「原料の芋、米は水分をたっぷり含んだ低圧の蒸気で蒸したほうが味に幅がある美味しい焼酎が出来るので、あえて熱効率が悪くてもコルニッシュという古いボイラーを使い続けているんだよ」と渡邊社長。

なるほど!例えば電子レンジで温めた芋は甘味が足りなくてモソモソしているのに、同じ芋でも蒸し器で蒸したものは驚くほど甘いですよね。同じ「温める」でも、温め方によって相当な違いが生まれます。それにパンだって、発酵後焼く前には霧吹きで水分をたっぷり与えます。そうすることによって表面が乾くことがなく、ふっくらと仕上がります。「温める」という過程一つとっても安易な妥協を許さず、なぜそうするかという哲学を守り抜く酒蔵なんだなー、とただただ感心することしきりでした。


今回の蔵訪問で印象的だったのは芋焼酎の奥の深さです。原料をただ蒸留するだけではなく、蒸留に至るまでにはそれこそ数え切れないほどの工夫があるのです。例えば同じ品種の芋でも原料の芋の皮を全部むくか、半分むくか、全くむかないかでも味の印象はまるで変わるし、白麹を使うか、黒麹を使うかや、割水をどのくらい入れるかでも「これが同じ品種?」と疑うほど違うものができます。

また芋は、ある程度貯蔵がきく米や麦と違い、畑から採れたてで新鮮なうちの9~12月に製造が限定されてしまいます。ブームだからといって急に増産するといってすぐできるものではないし、さらに限定された品種でつくるため、何しろ手間がかかる、デリケートなものだということも知りました。

そんなデリケートな芋焼酎を丁寧に丁寧に製造していく京屋さんの姿勢に感動!

さらに京屋酒造では、地域特産の「平兵衛酢(へべす)」という、すだちに似た果実を本格麦焼酎に漬け込んだリキュールや、ナツメヤシを原料にした焼酎なども出しているのです。甕仕込みという昔ながらの製法を守りながらも、常に新しい挑戦をしつづけるこの酒蔵。これからも革新と伝統を共存させて、おいしい焼酎を造っていってほしいですね。



焼酎基礎知識

※1●焼酎、日本酒、ビール、ワイン。発酵のしかたに違いはあるの?

どれもアルコール発酵(酵母が糖分をアルコールと炭酸ガスに変える現象)をしているというところは共通です。でもアルコールをつくる酵母は甘いものが大好きで、甘くないものにくっつくことはできません。そこで、もともと甘くない原料は甘くする必要があります。

ワインに使われるブドウにはもともと糖分が含まれているため、酵母はくっついて、勝手にアルコールをつくることができます(これを単発酵といいます)が、日本酒やビール、焼酎に使われる米や麦にはもともと糖分が含まれていません。そこで焼酎、日本酒、ビールは

1.原料に含まれているデンプンを酵素(日本酒・焼酎は麹、ビールは麦芽)によって糖化させ
2.その糖に酵母がくっつき、アルコール発酵する

という2段階を踏みます。

焼酎、日本酒は、この糖化→アルコール発酵という一連の現象が1つの場所で同時に行われます。これを平行複発酵といいます。文字通り、複数の発酵が平行して行われているということです。

一方ビールの場合は糖化とアルコール発酵は同時には行われず、糖化終了後、アルコール発酵が行われます(これを単行複発酵)といいます。


※2●九州ではなぜ焼酎が多く作られるの?

焼酎に一般に使われる麹は、白麹や黒麹です。日本酒に使われる黄麹と違い、白麹や黒麹はクエン酸を多く出します。クエン酸が雑菌をやっつけてくれるおかげで、暑い気候でももろみが変質するのが防けます。だから温暖な九州では焼酎づくりが盛んなのです。

夏場のお弁当にはクエン酸を多く含む梅干しを入れると痛みにくいと言いますが、それと同じ作用を麹ももっているなんて、すごいですね。


※3●甲類・乙類って何?

「ホワイトリカー」として知られる甲類焼酎と、本格焼酎として人気の乙類焼酎。どちらも、もろみを煮立たせて蒸気を取り出すという原理は一緒なのですが、蒸留の仕方に違いがあります。

甲類は連続式蒸留機、乙類は単式蒸留機というものを使っています。単式蒸留機とは、もろみをぐつぐつと火にかけ、でてきた蒸気を取り出して冷やす機械です。一度しか蒸留しないため、芋や麦の素材の味が生きた焼酎ができます。

一方連続式蒸留機は、蒸留を1回ではなく連続して行い、繰り返すことでどんどんアルコールの純度を高めることができる機械で、この機械で蒸留すると不純物が少なく、クセがない味わいに仕上がります。

また酒税法により、甲類はアルコール度数が36未満、乙類は45度以下と決められています。


※4●常圧蒸留と減圧蒸留って何?

気圧の低い富士山の頂上でお米を炊こうとすると、なかなかうまく炊けません。なぜなら沸点が低いために、お米に火が通らないからです。

このような圧力により沸点が変化することを利用して、蒸留機の中の圧力を人工的に下げることで沸点を低くし、低温で蒸留させる方法を減圧蒸留、通常の圧力で蒸留を行う方法を常圧蒸留といいます。

常圧蒸留は高温で蒸留するため、エキス分がぎゅっとでた、原料の特製を生かした薫り高い焼酎ができるといわれていますが、その一方、その香り高さは素材の持ち味を消してしまうほど強烈な場合もあるので、熱狂的なファンもいる反面、敬遠する人もいるようです。

それに対して減圧蒸留で作る焼酎は、低温でじわじわと成分を抽出するためおだやかに原材料の香りがでるので、最近の軽快でソフトな感じの焼酎の人気に伴い主流になりつつあるようです。

投稿者 Admin : 2004年10月11日 22:57

突撃潜入

日本一の技能を持つバーテンダーに京屋の焼酎6種をテイスティングしてもらった!

 焼酎百景酒草子の第一回目、利き酒師ちえちゃんの「AOBA」突撃はいかがでしたか?焼酎への深い造詣もさることながら、なかなか旨そうなお料理の店でしたね!今度行ってみなければ、、、

 さて!第2回は、わたくし食い倒ラーやまけんの番です。芋焼酎といえばお湯割り、水割りが主流の中で、最近はロックで楽しんだりという人も増えてきました。色んな飲み方ができる焼酎のポテンシャルが理解されてきたと言うことですね。
 と、色んな飲み方ができるようになったのであれば、例えばカクテルなんかにも使えるんじゃないか?そういえば芋焼酎ベースのカクテルって聞いたことがありません。甲類の焼酎で作るチューハイとかではなくて、本格焼酎を使ったカクテルなんて、面白い!それに加えて、バーテンダーさんに京屋の芋焼酎をテイスティングしてもらって、どれが好きかというのを聞くのもいいな!

、、、ということで、突撃第2弾をやってきました!インタビュー&テイスティングをお願いしたのは、僕が行きつけの「Bar オーパ 門前仲町店」。この「オーパ」は、銀座にある本店が超有名ですが、門前仲町店の店長さんである水澤さんが、つい先日開催された「全国バーテンダー技能競技会」で見事優勝!されたのです。実は僕、この競技会の応援に神戸まで行っていました。その感動的な模様は僕のblog記事をご参照!いや、本当に凄かった!つまり、この水澤さんは、現時点で日本一の技能保持者なんですよ!

 今回水澤さんには、あらかじめ京屋の焼酎6種類を渡して、従業員の人たちとテイスティングして頂きました。その上で、バーテンダーから観て焼酎にあう料理、そしてカクテルへの利用価値を考えて頂くという方式にしました。なんという贅沢な企画でしょう、、、

そうそう、6種類の焼酎は下記です。原料や処理方法、麹の種類なんかも一挙大公開!マニアには溜まりませんね、、、

■今回試飲していただいた焼酎と内容

shouchu.gif


 水澤さん、じっくり時間をかけてテイスティングしてくれたとのこと。開店前の貴重な時間に、インタビューさせていただきました!

--------------------------------------------------
Barオーパ 門前仲町店
水澤 泰彦氏
1971年生
長野県出身
第31回全国バーテンダー技能競技大会 総合優勝!
IMG_2902-2.jpg

■今日はよろしくお願いします!

 どうもお世話になってます!焼酎6種類、試させて頂きました。美味しい芋焼酎ですね!日本の酒はあまり飲む機会が少ないんですが、やっぱりいいものだと思いましたね。お店が終わってからスタッフとじっくりいただきました。

■どのようなテイスティング方法を行いましたか?

 テイスティンググラスを使い、最初はそのままストレートで、そしてほんの少し水を加水して、そして氷を入れ、最後に水割りにして頂きました。

 6種類、個々に違いがありますね。例えば加水した段階で香りが出てくるのが、かね京かんろ、かんろ、特選かんろなんです。特にかんろ、特選かんろ。ウイスキーも同じですが、ストレートで飲むと、アルコール臭が先に鼻についてしまうので、正確な味がわからないんです。そこに一滴だけでも水を落とすと、背後に隠れていた香りが立ってくるんです。面白いですよね。

■水澤さんがベストと感じたのはどの銘柄でしょうか?

 私のベストワンは「かんろ」です。6種の中ではこの香りが一番好きです。なんて言うか、、、信州の実家にあった蔵の奥の香りを思い出すんですよ。漬け物桶があったんですが、そういう発酵系のものがあった場所の香りなんですかね!他のスタッフは特選かんろを推していたのですが、僕はこちらの方が好きでした。

※注:実は6種を渡した時点では、どれがどういう酒というのは情報を出していませんでした。ブラインドテストをしてもらったわけです。その結果、一番オーソドックスな「かんろ」を選んでくるあたり、さすが鋭い!


■他銘柄について面白い傾向はありましたか?

 かね京かんろ、時代蔵かんろはウォッカっぽい感じがして面白かったです。この2品には黒麹が使われていますから、その影響でしょうか。北欧系のウォッカに似ているんです。ウォッカには北欧系、アメリカ系、ロシア系の3つの系統があるのですが、その中でも「ピュア」といわれる、透明感のある北欧型ウォッカに似ています。

 スーパーライトかんろ(スーパーライト)は、少しアルコールっぽさが強いですね。ツンと来るかんじです。これもウォッカ風と言っていいでしょう。

 私はかんろが好きですが、特選かんろはスタッフに大人気でした。フルーティで飲みやすさを感じました。

 あと、原料の処理方法については、特にそれが大きく影響するというのは感じられませんでした。同じ造り方で原料処理方法を変えた物があったら、はっきりと分かったと思います。

IMG_1128.jpg

■料理との相性はどんな感じでしょうか?

 芋料理に合うんじゃないかと思って合わせてみましたが、やはりとても合いますね!例えば、よくあるポテトサラダに合わせても、芋と芋ということで相乗効果になるのか、とってもよく合いました。

 また、うちの定番のフライドポテトに合わせてみましたが、予想通り、がっちりと合いました。うちのはトスカーナ風に、ニンニクやハーブ類と一緒に揚げるフライドポテトなんですが、この強い風味に芋焼酎の強さがマッチします。なんというか、芋料理が本来持っている芋の香りを、更に強く引き出す気がしますね。

■そうですか、では、京屋の焼酎を使ったカクテルなんていかがでしょう?何か創れそうですか?

 僕も試してみたかったんですが、、、カクテルにするにはちょっと度数が弱いですね。度数が弱い酒に他の材料を足すと、薄くなって意味がなくなってしまうんです。20~25度ではカクテル用途はちょっと厳しいですね。
 なんというか、、、この焼酎は、そのものの素材感を活かした方がいいので、他の味を足すのには向かないと思うんです。例えばパッションフルーツを添加すると、せっかくの芋の風味が台無しになるような気がしますよね。相乗効果が出るものがあるかと思ったのですが、もうちょっと度数が欲しいですね!

■なるほどぉ、、、では、バーテンダーが求める焼酎、というか酒って、どういうものなんでしょうか、お訊かせ下さいますか?

 そうですね、、、バーテンとしては、「粗い中に強い美味しさがあるもの」を求めているんです。粗くていいんです。そこの部分は、他の要素を足したり引いたり出来ますから。それよりも、ガツンと効く、他の酒にはない個性が欲しいです。

 京屋さんの焼酎は、そのまま飲むことが基本の酒ですから、全体的に控えめでした。カクテル用途を意識されるのでしたら、これに加えての強い特徴が欲しいですね。その際にはかんろ、特選かんろを発展させるといいかな。この二つがきっと、東京向けのものなんだろうと思ってました。

■すっごく参考になるご意見でした!本当にどうもありがとうございました!
--------------------------------------------------

 忙しい中、ご対応いただいた水澤氏に感謝!

 面白かったのは、水澤さん、スタッフの皆さんともに、高温蒸留の酒をイチオシしていること。バーテンダーさんの嗜好には、高温蒸留の強い香りがいいのかもしれないなぁ。インタビューの中にあったように、他の味を混ぜていく時に、最後まで強い香りが残るからでしょうかね。

 それにしてもプロのテイスティング方法を知ることが出来てよかった。ちょっとだけ、一滴だけ加水することで全然変わるのですね。こんど僕も家でやってみようと思いました。

さて、
 水澤さんからは「もっと強い酒が」ということでしたので、京屋の渡邊社長様から「加水していない原酒を送りますよ」とのことです。よし、これでカクテルを試してもらおうっと、、、お楽しみに!

--------------------------------------------------
■今回ご協力いただいたお店:

Bar オーパ 門前仲町店
東京都江東区富岡1-25-4 ニックハイム八幡204
03-5245-3539

投稿者 Admin : 2004年09月01日 09:26

突撃潜入

焼酎と旬の和食の店「AOBA」 with 宮崎の芋焼酎

この度やまけん氏とともに、まっすぐな心でつくられている焼酎を、ブームに流されることなく応援していきたいという思いでこのblogを書くことになりました、ちえです。おいしいお酒と料理のために生きている会社員です。どうぞよろしくお願いします。

さて、今回は東京・中目黒の「AOBA」に焼酎を持ち込んでお邪魔しました。このAOBA、大学のサークルの先輩の行きつけのお店ということで紹介してもらって私も行くようになりました。料理のうまさ、焼酎の品揃えの多さ、店長のきさくさ、店の雰囲気の良さと四拍子も揃っていて、私がとたんに惚れこんでしまった店なのです。

持ち込んだのは宮崎の芋焼酎6種。最初の写真の左から、甕雫、スーパーライトかんろ、かね京かんろ、かんろ、特選かんろ、時代蔵かんろ。アルコール度数や麹の種類、芋の種類や芋の皮のむき方まで違うものです。

(宮崎県限定販売の「かね京かんろ」以外はe-shouchu.com(イー ショウチュウ  ドットコム)にて購入可能です。但し商品によっては発送に時間がかかるものもあるのでご注意を) 

今日は「AOBA」店長、羽山氏にこれらを試飲してもらい、感想や焼酎よもやま話をききつつ、焼酎に合った料理を作ってもらおうという魂胆。「宮崎の焼酎は大体20度が多くて、軽くて飲みやすいものが多いんだよね。」と店長。果たして、それに合う料理とはどんなものか?そしてどんな話がきけるのか?今からわくわく!

まずは本題に行く前にヱビスビールで喉を潤し、山形の「小真木(こまぎ)」という品種のだだちゃ豆を頂きました。見てください!このほわほわの産毛を。この産毛と、茹でたときの甘い香りがだだちゃ豆の特徴だそう。香り高い茹でたてのほこほこを食べると、しっかりした歯ごたえのなかからうまみと甘味が押し寄せてきて、それを冷たいビールでくいっと流す。最高の一瞬です。

このお店、店長が料理をすべて担っていて、とても忙しそう。そこで店長の調理が落ち着くまでは自分セレクトで料理と焼酎を合わせてみることにしました。まずは「イモつながりだから、合うかも?」と、里芋の唐揚げをあわせてみることに。里芋を薄衣でカラリと揚げたものに塩をちょん、とつけて。表面のさっくり感と、中のねっとり感のバランスが絶妙。そして持参の芋焼酎が、このねっとり感を流しつつ、さらに芋独特の風味と共鳴して、イケル!と確信しました。

唐揚の脂をさっぱりと流したいのなら、すっきり系の「甕雫」「スーパーライトかんろ」「かね京かんろ」が、流しつつも、里芋×さつま芋の共鳴を楽しみたいなら、芋の味が強い「かんろ」「特選かんろ」「時代蔵かんろ」が合うのではないかな?これだけ種類があると、自分がどう食べたいかによって選べるから楽しいですね。

--------

さあ、そして店長、羽山氏の試飲+料理のセレクト。(ぜひ顔写真を!とお願いしたのですが、「顔をみてお客さんがこなくなったら困る」とシャイなお答え。ナイスガイなのに、残念!)

「同じ九州の焼酎でも、鹿児島は芋、熊本は米、というように、きっちりカテゴリー分けされてるけど、宮崎はそれぞれの文化の交差点だから、芋、米、麦と色々あるし、それぞれがクセがなく飲みやすいことが多いんだよ。だからどんな料理にもあわせやすいのが特徴だね」

なるほど。ただでさえ焼酎は食中酒で料理と寄り添うように合うというのに、さらにクセがないということは、要は何にでもあってしまうということですよね。料理とお酒を気軽に楽しみたい人にとっては嬉しいお酒です。

それでもあえてぴったりを見つけるならと、店長がおすすめしてくれたのは地鶏です。ご存知の方も多いかもしれないですが、宮崎は地鶏の炭火焼き、チキン南蛮などといった、地鶏を使った名産品が多いのです。その土地の料理とその土地の焼酎、これは文句なしに合うに違いない、ということで、まずは地鶏の網焼きをいただくことにしました。

鶏は徳島産の滋養鳥というもの。写真の右手前は心臓部分で、奥は白レバー。白レバーは1/20羽からしか取れないそうです。これを炭火で焼き、白レバーはゴマが利いたタレで、他は柚子胡椒とレモンで食べます。「新鮮だから、さっとあぶるくらいでいいよ。でも心臓はよく焼いたほうが、コリコリ感がでて美味しいよ」と店長。

この炙るプロセスも楽しい! そして鶏を口に入れるとさっと炙っただけなのに、しっかりとした歯ごたえ。そして品のいいコクみを、柚子胡椒とレモンが引き立ててくれます。レバーも焼くことで程よく脂が抜け、生臭さもまったくありません。

そして焼酎に合わせてみると…うーん、ぴったり。今日持参の焼酎はいわゆる「芋くささ」を感じないものでした。それでいて、「芋らしくない芋焼酎」というわけではなくて、ちゃんと後味に、心地よい風味として残っているのです。それが鶏肉のうまみを邪魔せず、かつ鶏の強さに押されることなく共存している感じ。

また、今日持参した焼酎の印象と、飲み方についてのご意見をいただきました。

甕雫は焼酎初心者にも飲みやすいね。ストレートで飲みたい。かね京かんろは鼻に抜ける感じが黒麹らしい。かんろはとてもバランスがいい酒だ。黄金千貫(コガネセンガン)を原料に使った、定番の味だね。ロックでも飲みやすい。特選かんろは常圧蒸留で白麹だから、お湯割にあいそうだね。一般的に常圧蒸留の白麹はお湯割に合うんだよ」

私はこの取材にいくまで、「この焼酎とこの料理は合うだろうか?」という組み合わせは考えていましたが、「この焼酎は水割、お湯割、ロック、ストレートのうち、どの飲み方で飲めば一番よさが引き立つだろうか?」というところまで考えが及んでいませんでした。店長のこの感想を聞いて、焼酎の特徴が分かった上で飲み方や料理を選べるのって、かっこいいなー、と感動しました。

そして甕雫に合う料理ということで作ってもらったのが、この「鮪中トロ」。青森の大間(おおま)から今日届いたばかりの鮪を店長がさっと片面だけ炙ってくれて、それをポン酢で頂くという、涼感あふれる一品です。

「この焼酎、日本酒の"料理を中和させる"役割と、焼酎の"脂を流す"役割の両方を持ってると思ったんだよね。」と店長。日本酒は魚の生臭さを中和して、まろやかにしてくれる。そして焼酎は、脂をさっぱりと流してくれる。その両方を兼ね備えた特徴をもつ甕雫を、この脂が乗った鮪に合わせることによって、生臭さをさらに押さえ、さっぱりと頂けるようにしてくれたのでした。

おっしゃる通り、口の中での焼酎と中トロとの出会いは感動的ですらありました。まろやかに合わさって、さっぱりと流れていく。生きてて良かった~。

---------

持ち込んだ焼酎の試飲以外にも、店長が焼酎に惚れるきっかけになった焼酎、鹿児島県の富乃宝山を頂きました。この焼酎、仕込みに清酒で使われる黄麹が使われていて、吟醸酒や桃、メロンのようなみずみずしい香り、そしてくどくない甘さがあり、とてもおいしいのです。

「芋っぽくない芋焼酎なんて地元の人は焼酎じゃないなんていうかもしれないけれど、俺はまずこれで焼酎の概念が変わったからね。そこからはどんどんはまり込んでいった。」と店長。

さらに、店長が一番好きだという芋焼酎、鹿児島県高良(こうら)酒造の八幡も飲みました。こちらは先ほどの富乃宝山とは打って変わり、芋のうまさがぎゅっと凝縮した、しっかりと濃い味。前者が女らしい優しい酒だとしたら、後者はがっちりとした男の酒です。

富の宝山で目覚め、八幡に落ち着く。焼酎を知り尽くした通の選択には重みがあります。

空前の焼酎ブームの中でも、「どうも焼酎はクセがあって苦手」と思っている人もいるかもしれないけれど、様々な焼酎が選べる今がまさに、焼酎に目覚めるチャンスだと思います。AOBAの店長のように、1つのきっかけが大きな転機を産むかもしれないのです。

色々な焼酎を色々な料理にあわせて、自分が好きなスタイルで飲む。
焼酎が苦手な人がこのblogをきっかけに興味を持ってくれたり、焼酎好きが人がさらに好きになってくれれば、筆者としてこんなに嬉しいことはありません。

これからそんなblogを目指し、日々書き連ねて行きたいと思っていますので、今後もどうぞよろしくお付き合い下さい!

----
お店情報:AOBA
〒153-0042
東京都目黒区青葉台3-22-1 目黒ハイツ1F
TEL/FAX:03-3716-8600
■DINNER (日祝 休)
 ・7:00 pm - 3:00 am (月~木)
 ・7:00 pm - 5:00 am (金、土)

投稿者 Admin : 2004年08月12日 18:35